るりかけすの空は

空にまつわる二つの話 *本編*


  今私は、成田を発って間もない飛行機の中でこの手紙を書いています。
  前に話したことはあったでしょうか。
  飛行機が飛び立つ時ほど、
  何とも言えない安堵感と嬉しさを感じる瞬間がないということを。
  
  機体がふわりと浮き
  抗う気力も起きないような力で背中を押し付けられるに身を任せ
  静かに目を閉じると、なぜかいつも涙が出ます。
  
  多分それは
  様々なしがらみや煩悩、
  日々のやらなければいけない諸々のことなどを
  全部地上に捨てて、空へ飛び立っていけるように思えるからだと思います。

  泣いてしまうほど、私の日常生活はしがらみだらけなのかと
  苦笑いしてしまうのですが。



部屋を整理していたら、こんな書きかけの手紙が出て来た。
一瞬の間を置いて、その手紙を宛てた相手と、手紙を書いた時の状況が鮮明によみがえってきた。

5年前のその時とは比べようもないほど「しがらみ」が減った今でも、
飛行機が離陸する瞬間は、旅の中で最も私が感傷的になり、
愛している時間であることは変わらない。
旅に出る理由はそれぞれにあると思うが、私の場合、この飛行機が飛び立つ瞬間を味わいたいのと、空の旅を楽しみたいからというのも立派な理由のひとつである。

これから始まる旅に想いを馳せたり、読めもしないほど大量に持ち込んだ本を、
心ここにあらずの状態でパラパラとめくってみたり、機内誌にくまなく目を通したり。
今どの辺りを飛んでいるのか、モニターで確認するのも旅気分を盛り上げてくれる。
映画を観ることもできるし、頭を空っぽにして窓の外を眺めるのもいい。
何よりの楽しみは機内食。
おもちゃのようにコンパクトにまとめられた機内食は
味がどうであれワクワクしてしまう
(その分、期待はずれだった時の失望感も大きいのだが)。

そして、もうひとつの旅に出る理由。

それは人との「出会い」である。
旅先での、しかもこの先訪れることはないであろう土地での、一度きりの出会い。
二度と会うことはないだろうが、その人は確かに私の記憶の中に生きて、ある瞬間にふと現れる。
その人の言った言葉が、人生を左右することだってある。
同じように、彼の人はこの先の人生で、私を思い出すことはあるだろうか。
そんなことを、よく考える。
もう会わないからどうでもいいのではなく、一度きりだからこそ大切になる出会いが旅にはある。

あるフライトでは、星々のきらめく夜が何時間も続く。
エンジンの轟音を聞きながら、果てしない闇を見ていると、まるで宇宙に放り出されたかのような奇妙な感覚に陥る。

また、あるフライトでは、朝を追いかけて飛んで行く。
離陸後、一定の時間を経ると、しばらくの間目覚めたてのような朝焼けが続く。
群青色に一筋の光が差したと思うと、ゆっくり時間をかけて薄紫色、そしてマゼンダ色と息をのむような美しさで表情を変えていく。そんな空の様は、見る者をたちまち詩人に変えてしまう。

現実世界へ戻る前に見る、束の間の夢の時間。
気付くと、目を開けていられないほど眩しい金色の光が、
まぶたの薄い皮膚を突き破って、私を現実へと引き戻す。

着陸の時が近づいている。


  二度と会えなくても
  離れていても
  あなたが僕の欠片となって
  通り過ぎたこと
  まぎれない足跡

  空の作り方を
  あなたのことを
  忘れぬように 余白に書いて
  手紙を出そう
  僕ら 思い出にならないように

                     『空にまつわる二つの話』より

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飛行場の夜明け


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モニターの飛行地図


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うなぎの蒲焼き、のり巻きとチョコレートケーキ。
個人的に最も好きなルフトハンザ(LH)


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白身魚のあんかけとパスタサラダ、ブルーベリータルト(ヴァージン・アトランティック)


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肉じゃがと煮物はさすがJAL。
日本からジュネーブへ


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朝のはじまり


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ゆっくりと世界が目覚め始める


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airplane photo by Izumi Sasamori
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by sorapis | 2009-02-07 02:18 | Travel:るりかけすの旅

シンガーソングライターるりかけすの山と本とサブカルな日々の話。
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