るりかけすの空は

愛しい音

ピアノを買ってもらったのは何歳の時だったろう。
習い始めたのは5歳と決して早くはない。が、小学校3年生の時にピアノに夢中になってからは私にとって空気のような存在だった。あまりに好きすぎて、ピアノを勉強机にしたり、ピアノの下に布団を敷いて寝ていたこともあるほど(笑)。絶対に離れたくなかったのだ。

それなのに、このピアノと離れて8年くらいが経ってしまった。その間、実家から持って出た電子ピアノで歌を創るようになり、るりかけすとして活動を始めた。
ライブハウスでピアノを触るたびに、自分のピアノを思い出した。私の第二の言葉であったピアノの音やタッチとはまるで違うのだ。

私のピアノはごくありふれたアップライトで、もちろん国産。でも大好きな音だった。そりゃ、スタンウェイやベーゼンドルファーなどとは比べ物にはならないのかもしれないが、私はその厚みがあるのに温かい音を愛していた。

そのピアノを、とうとう今日実家から引き取った。
嬉しくて嬉しくて、まるで初めてピアノを買ってもらった時のようにどきどきした。
なぜかわからないけれど、動いた指から流れたのはバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」と、ショパンのプレリュード「雨だれ」。

あぁ、この音だ。

涙が出た。
音の記憶は、ともすれば映像や言葉よりも生々しい。
流れ出す音を聴いて、目眩を覚えるほど沢山の記憶が溢れ出した。よくこれだけ離れていられたな、と思った。

でも、もうこれからはまた一緒。
多分、私がおばあちゃんになっても一緒。私は再びもうひとつの言葉を手に入れた。このピアノからどんな新しい曲が生まれるのだろう。

さあ、これから手あかと埃のついたピアノを、すみずみまで磨こう。
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by sorapis | 2008-07-20 14:50 | Murmur:つぶやき

シンガーソングライターるりかけすの山と本とサブカルな日々の話。
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