るりかけすの空は

没頭と記憶とアウレリウス


帰国後、寝食を忘れて「書くこと」と「モノ作り」に没頭していた。

寝食も惜しむほどの集中力なので、世界堂に材料調達以外は外出もなし。
何年ぶりかの連続徹夜も体験。
ひたすら机に向かい、ふと顔を上げると窓の外が明るくなっていることに気付く。
なんて経験は、受験の時以来じゃないかと思う。
疲労感はあるけれど、達成感のような高揚感にも包まれ、さらにお昼頃まで頑張って、ベッドに倒れ込むようにしてわずかばかりの仮眠を取る。
目覚まし時計でヨロヨロしながら起きて、また書き続ける。

一段落してみると、けっこう楽しかった10日間。
こういう何もかも忘れて没頭することに幸せを感じる性格なのだろうな、と思う。

作業を黙々としながら、呆れるほど色々なことが頭に浮かんでは消えて行った。
そうしてバカみたいに考えているうちに、自分の目指したいところ、
捨てないで守り抜きたいと思うものが絞られ、凝縮されて、
手に届くところまで分かりかけたような気がする。


思えば小学校1年生にして
「家族かべ新聞」(名前がストレート過ぎて笑える)を家族内で日々発行、
カレンダーの裏を切り貼りして大きな壁新聞を作成し続けた。
小学3年生になってクラスに係が出来ると、真っ先に新聞係に挙手し、学級新聞を発行する楽しさに目覚めた。
5年生からは味を占め、何とほぼ毎日学級新聞を発行すると言う奇行?を中学まで続けた。

記事はほとんど自分。
イラストも書いてくれる人がいなければ自分。
(ペンネームはもちろん変える。が、画筆は明らかに同一人物)

問題は新聞タイトル。
「大造じいさん新聞」(男子版)と「梅さん新聞」(女子版)である。
センスのかけらも伺えないところが痛々しい。

それでも、そのキャラクターたち(大造さんに梅さん)が愛され、
ファンクラブなるものもクラス内に出来ていたのだから、
それなりの愛読されていたということだろうか。

そして、毎日のように印刷室へ押し入る変な生徒を、
嫌な顔一つすることなく(と信じたい)受け入れてくれた先生方に、
心から感謝したい。
きっと私の暑苦しい熱意に負けたのだと思うのだが(苦笑)。

毎日の新聞作業に追われながらも、情熱を傾けていたのは演劇の脚本。
教科書のパロディものからシリアスな劇まで、何本も書いた。
小学校は、演劇を上演する行事に事欠かなかったから、他のクラスからも脚本を頼まれた。
自分の書いた本をみんなが上演してくれるというのが嬉しい一存で。
思春期になる前で、恥じらいという言葉を知らなかったゆえの没頭。

そして小学生時代の最大の編集作業と言えば「卒業文集」。
当然ながら委員に挙手しており、
今や見返すのも泣きたくなるようなお粗末さではあるが、
その中に思わず「自分の好きな言葉」を書き付けてしまっているのは、
誰にも教えたくない秘密である。

念のため書いておくが、
「みんなの好きな言葉を一人一句」とかいうコーナーではなく、
先生からの有難いメッセージなどが綴られた脇の「思いがけず出来てしまった空白」に、私はそれを書いてしまったのだ(汗)。
しかも筆ペンで・・・(滝汗)。

あぁ、若気の至り。
そんな若干12歳が選んだ言葉とは。。

  「君が覚えた技術をいつくしみ、
   その中に安らえ」

マルクス・アウレリウス・アントニヌス
  :古代ローマの哲人皇帝、(121〜180)
/『自省録』より

なぜにこんな言葉が好きだったんだろう。
この真意を、12歳の少女には決して理解できていなかったはず。
本はバカみたいに読んでいたが、さすがに『自省録』を読破した記憶はない。
それでもどこで知ったか、この言葉が好きだった。
大人になった時、きっとこの言葉が助けてくれるはず、と思っていたことを鮮明に覚えている。
だから、卒業文集という大事なスペースに、わざわざ筆ペンで書いたのだ。

そして、徹夜明けのぼやけた頭で、この言葉の真意に気付いた。

この手にある「技術」は恐ろしく小さくて、役に立たないかもしれない。
でも、私にとってはかけがえのない財産なのだ。

これだけは断言できる。
どんな人も、必ず何らかの「技術」を持っているはずだ。
大それたものでなくていい。
こんなに生きてきたのだもの、
いくつかの小さな愛すべき技術を手にしているはず。
それを思い出して下さい。

「幸せ」と感じるのも「不幸」と感じるのもその人次第。
説教臭いことを垂れるつもりはない。
でも、2000年近くも前にいた賢い皇帝が言った言葉は、
今なお、私たちに温かいメッセージを送ってくれているのだ。
そして、その素敵なメッセージを、12歳の私が未来へと残してくれていた。

私の小さな技術は何だろう。
少し、嬉しくなった。


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大好きな友人が山行のために作ってくれた行動食クッキー。
チョコレートにナッツにバターたっぷり。高カロリーをぎゅっと詰め込んでくれた。
何て粋なプロフェッショナル!!
そういうことなのだ、と思う。そういうことなのだ、と。
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by sorapis | 2010-10-13 03:48 | Murmur:つぶやき

シンガーソングライターるりかけすの山と本とサブカルな日々の話。
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