るりかけすの空は

『影の縫製機』 ミヒャエル・エンデ


『影の縫製機』(1982年、ドイツ/オーストリア)
 作:ミヒャエル・エンデ
 絵:ビネッテ・シュレーダー
 訳:酒寄進一
 長崎出版・2006年
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仕事でレビューを書くために3冊並行読みをしていた時、
ふと見上げた書棚に思いがけず目が止まった。
群青色のクロス装に、繊細な宇宙の絵が美しい紙箱入りの本。
『はてしない物語』や『モモ』で知られるミヒャエル・エンデが、
絶頂期に出した詩集『影の縫製機』である。

これは、大切な友人が2年前の誕生日に贈ってくれたもの。
はさんであった手紙に目を通して、当時の様子を懐かしく思い出しながら
珠玉の19篇をじっくりと読む。

—「影」。

光がある限り、意識していようがいまいが、それは存在する。
足下からのびる影を完全に忘れている人もいれば、
大きくなり過ぎた影に呑まれそうになっている人もいる。

エンデ独特の哲学観は、どこか村上春樹に通じる幻想的な世界を纏いながら、
影とのつきあい方をそっと教えてくれる優しさを持つ。
それは時間と共にじんわりと心に沁みてくる。
読んだ翌朝、得も言われぬ温かい気持ちがお腹の辺りを満たしていた。
人は「影」の存在を心から認め、受け入れられた時、
少し生きやすくなるような気がした。

繊細な線画でエンデの世界をより一層豊かに彩っているのは、
絵本売場に行ったことがある人なら 必ずや目にしているであろうビネッテ・シュレーダー。
細やかな陰影と色彩、柔らかなタッチの画風しか知らなかったので、
不可思議で、シュールレアリズムの影響も感じさせる緻密なモノクロの線画に軽い驚きを覚えた。

とはいえ、やはり原書を読んでみないことには。
そんな嬉しい再会もあった秋の夜長の出来事。

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1975年にスイスの「最も美しい本」賞、
1977年にライプツィヒ図書展の「世界で最も美しい本」賞を受賞したシュレーダーの『わにくん』。
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by sorapis | 2009-10-09 04:38 | Review:カルチャー

シンガーソングライターるりかけすの山と本とサブカルな日々の話。
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